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九州大学景観研究室のブログ

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2012年 07月 02日

石垣現場見学【行事/小川】

筑後川瀬ノ下地区の樋門及び護岸の石積み施工を行ってくださっている、
藤本石工の藤本さんのご厚意で長崎県で藤本さんが施工に携わられた現場を
見学させていただきました。

まずはじめに案内していただいたのが、
現在修復作業中の「旧出津授産場」です。
石垣現場見学【行事/小川】_d0073159_7523333.jpg


ここは、フランス人宣教師ド・ロ神父が私財を投じて整備した
福祉施設群で、
授産場、鰯網工場、マカロニ工場、敷地内の塀、石垣、石段が
国の重要文化財に指定されています。

藤本さんは敷地内の石垣及び石段の修復に関わられました。
昔の職人が積んだ積み方をできるだけ守るため、
石垣をいくつかのグリッドに分割したのちに
グリッドごとに現況をトレースし、
一つ一つの石に番号を振ってから一度解体し再度積み上げるという
気の遠くなるような作業をおこなって修復なさったそうです。

(公開前のため写真の掲載はできません)

その中で、石が破損している場合は形の似た新しい石に交換し、
強度が持たない部分については
現在の技術を使って補強を行っています。
ここでは、空積みであった箇所を練り積みにすることや、
アンカーボルトを使用して石を固定する方法等が取られています。

修復作業が終わり公開された際には内部まで見学したいと思います。


次に伺ったのが、
長崎市内にある「長崎山 清水寺」です。

こちらは平成17年から5年かけて復元作業が行われ
国の重要文化財に指定されています。
京都の清水寺は木でできた舞台が有名ですが、
こちらは石でできた舞台がひとつの特徴です。

藤本さんは石垣、石の舞台、及び本堂の基礎部分
に使用されている石材の復元に携われました。
ここでは、基礎部分等で不足している石材があったため、
現場の寸法に合わせて新たな石材を用意し復元なさったそうです。
さらに、石垣の石は割り方も当時に倣い、
ドリルを使わない手法で行っています。
石垣現場見学【行事/小川】_d0073159_74844.jpg


石垣現場見学【行事/小川】_d0073159_7483419.jpg

住職の奥様にもお話を伺い、
昔の境内の様子や、石の舞台からの風景の変化まで教えて頂きました。


最後には、石材の丁場(石切り場)も見学させていただきました。
山から切り出してきた大きな石を
一つ一つ手作業で間知石に加工していく様子を職人さんに
教えて頂きました。
ハンマーだけで既定の大きさ・形に加工していく
技術力の高さに職人のすばらしさを感じました。
石垣現場見学【行事/小川】_d0073159_7494966.jpg


石垣現場見学【行事/小川】_d0073159_7501324.jpg


今回の現場見学ではお忙しい中一日時間を割いていただき、
ご案内していただきました。


「古い石積みを修復していく中で、昔の職人との対話ができ新しい発見がある。
手間はかかるけれど、貴重な経験ができる。」
とおっしゃっていたのが印象的でした。
真摯に過去と向き合う姿勢が不可欠なのだなと感じました。

今回は貴重な機会を与えて頂きありがとうございました。
また、各現場で御説明いただきました皆さま、
ありがとうございました。

by landscape237 | 2012-07-02 07:43 | 行事


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